はじめに
積雪荷重とは、雪が建物に与える重さを計算し、その重みに耐えるための設計を行うために必要な要素です。特に雪が多い地域では、積雪荷重の計算を正確に行うことが建物の安全性に直結します。しかし、初心者にとっては、地域ごとの規定や計算方法が複雑で、どこから手を付ければよいのか分からないことも多いでしょう。
この記事では、新米構造設計者の主人公と、経験豊富な上司が対話形式で積雪荷重の基礎知識や計算方法を学んでいきます。初めて構造計算書を作成する際に役立つ情報を分かりやすく解説していくので、ぜひ最後までお読みください。
積雪荷重の算定方法
上司さん、積雪荷重について教えてください!構造計算書を作っているんですが、計算方法がよくわからなくて…。
もちろん。積雪荷重は、屋根に積もる雪の重さを考慮して、建物がその重さに耐えられるように設計するためのものよ。
具体的には、どうやって計算するんですか?
基本的な計算式は次のとおりよ
積雪の単位荷重って、どのくらいなんですか?
建築基準法では、積雪の単位荷重は1cmあたり1m²につき20N(約2kg)以上と定められているわ。多雪区域では30N(約3kg)以上とされている場合もあるの。
垂直積雪量はどうやって決めるんですか?
垂直積雪量は地域によって異なるわ。建築基準法や各自治体の条例で定められているから、設計する建物の所在地の基準を確認することが重要よ。
あと、多雪区域では別途、垂直積雪量Dを定める基準があるよ。
勾配による影響
屋根の形状や勾配も影響しますか?
その通り。屋根の勾配によって、積雪が滑り落ちやすくなると、実際に屋根にかかる荷重が減少するの。これを考慮するために、屋根形状係数(μ)が使われるわ。
屋根形状係数はどうやって決めるんですか?
屋根の勾配角度や形状によって異なるの。例えば、勾配が急な屋根では雪が滑り落ちやすいから、係数が小さくなるわ。具体的な値は建築基準法施行令第86条や各種解説書に記載されているから、確認してみて。
積雪荷重 降雨による割増
最近、降雨による積雪荷重の割増が必要と聞いたんですが…。
ええ、そうね。多雪区域以外で垂直積雪量が15cm以上、屋根の水平投影距離が10m以上、勾配が15度以下、そして屋根の重量が軽い場合には、降雨による割増を考慮する必要があるの。
降雨による割増が必要な場合(下記条件すべてを満たす場合に割増が必要)
- 多雪区域以外で垂直積雪量が15cm以上の区域
- 棟から軒までの水平投影距離が10m以上のもの
- 屋根の勾配が15度以下のもの
- 屋根の重量が軽いもの
割増率はどうやって計算するんですか?
割増率(α)は次の式で求められるわ
- dr: 屋根の水平投影長さと屋根勾配から求まる値
- μ: 屋根形状係数
- d: 垂直積雪量
算定式より、積雪量が少ないほど割増が大きくなること、スパンが長いほど勾配が緩いほど割増は大きくなることがわかるわね。
なるほど、設計時には地域の基準や屋根の形状、さらに降雨の影響も考慮しなければならないんですね。
その通り。積雪荷重の計算は建物の安全性に直結する重要な要素だから、最新の基準や条例をしっかり確認して、正確に計算することが大切よ。
参考資料
関連記事
設計用荷重についての記事にそれぞれの場合について想定する割合を示しているのでそちらの記事も参考して下さい。
上記の記事の設計用荷重は架構用の荷重です。
小梁など二次部材の断面算定を行うときは1.0倍の積雪荷重で検討を行います。
まとめ
積雪荷重は、雪が屋根に与える重さを計算し、それに耐えられる建物を設計するために重要な要素です。地域ごとに異なる単位積雪荷重や垂直積雪量は、建築基準法や自治体の規定で定められています。設計者は、これらの基準をしっかり確認して設計に反映させる必要があります。
また、屋根の形状や勾配によっては、雪が滑り落ちる影響を考慮して積雪軽減係数を用いるほか、降雨による積雪荷重の割増も設計条件に応じて加味することが求められます。
積雪荷重の計算は建物の安全性を確保するための非常に大切な工程です。基準を正確に理解し、最新の条例や解説書を確認しながら計算を行い、安全で信頼性の高い建物設計を目指しましょう。