はじめに
「構造設計のスケジュールって、実際どう進んでいるの?」新入社員として業務を始めると、まずこの疑問が浮かぶのではないでしょうか。プロジェクトにはいくつもの段階があり、それぞれで異なる成果物を作成しながら進めていきます。
この記事では、企画設計から施工監理までのスケジュールと成果物を、新入社員でも理解しやすい対話形式で解説します。構造設計の流れをしっかりと把握し、業務の全体像を掴みましょう!
構造設計スケジュールと成果物
構造設計スケジュール
○○さん、構造設計のプロジェクトって、具体的にどのようなスケジュールで進行するんでしょうか?はじめに、全体の流れを把握しておきたいと思いまして。
いい質問ね、田中さん。構造設計のプロジェクトは一般的に以下のステップで進行します。各ステップの期間はプロジェクトの規模や内容によって異なりますが、参考までに一般的な期間をお伝えしますね。
- 企画設計(約1〜2ヶ月)
お客様の要望や意匠設計者との打ち合わせを通じて、建物の基本的な大きさや形状を決定します。この段階では、建物の用途や規模、デザインなどを考慮し、全体の構成をまとめます。柱スパンがどれくらいなど部屋の大きさに合わせて現実的な柱位置を落とし込む必要があります。 - 基本設計(約1〜2ヶ月)構造計算
お客様の要望や意匠設計者との打ち合わせにより、大まかな規模・形状が決まるとより具体的な条件を確認していきます。この段階では、メインフレームの構造計算が主になります。 - 実施設計(約2〜3ヶ月)構造計算
基本設計で決定した内容を基に、詳細な構造設計を行います。具体的な部材の寸法や材料、接合方法などを決定し、構造図を作成します。この段階で、設備設計者や施工業者との調整も行います。 - 確認申請(約1〜2ヶ月)
最終的な図面や計算書をまとめ、建築確認申請を行います。審査機関からの指摘事項があれば、対応と修正を行います。 - 施工監理(工事期間中)
施工中に設計図通りに工事が進んでいるかを確認し、必要に応じて現場での調整や指示を行います。また、施工中に発生する問題や変更点に対応します。
なるほど、各ステップにこれだけの時間がかかるんですね。設計期間は全体で約6〜9ヶ月ほどでしょうか。
そうですね。ただし、プロジェクトの規模や複雑さ、クライアントの要望によってスケジュールは変動します。また、各ステップでのコミュニケーションや調整も重要です。
よく理解できました。各ステップでの自分の役割を意識しながら、スケジュール管理を徹底していきます。
その意気込みで頑張ってください。何か困ったことがあれば、いつでも相談してくださいね。
各段階での成果物
構造設計のスケジュールって大体わかってきたんですが、各段階でどんな成果物が必要になるのか、正直まだピンときてなくて…。
なるほど、田中さん。構造設計では段階ごとにやるべきことが明確に分かれているから、まずはスケジュールと成果物、そしてその段階での決定事項をセットで覚えるといいわ。
スケジュールと成果物をセットにするんですね!ぜひ教えてください!
1. 企画設計
最初は企画設計よ。この段階では、お客様の要望から大まかな規模・形状を決めていく作業になるよ。
具体的には構造設計者は何をしますか?
お客様の要望から意匠設計者がプランを作成するから、柱位置や架構形式・構造種別についてアドバイスをするよ。
できるだけ早い段階で意匠とコミュニケーションをとることで、後々の自分の業務が楽になるよ。
成果物
・意匠図に柱位置を反映
2. 基本設計
最初は基本設計よ。この段階では、建物の大まかな形や構造の方向性を決めるのが主な仕事。成果物は「基本設計図」や「設計条件の確定」ね。
「設計条件の確定」ってどんな内容ですか?
建物の用途や規模、荷重条件など、設計の前提となる情報をまとめたものよ。この段階で「構造種別」や「基礎形式の概略」も決定するの。意匠設計者との調整も重要ね。
構造設計者としては、荷重条件は必ず押さえたいね。
「基本設計図」には何を記載しますか?
「設計条件の確定」から決まる大まかなメインフレーム記載するよ。
この段階では少し余裕を持った仮定断面で考えておくといいよ。
成果物
・基本設計図書→メインフレームの計算・図面反映など
・設計条件の確定→荷重条件、耐震性能、耐風性能、振動条件、地盤情報など
3. 実施設計
基本設計が終わったら次は?
実施設計に進むわ。ここでは、部材の詳細な寸法や材料を決めて施工図を作成するための構造図を作成するの。成果物は「構造図」と「構造計算書」。
具体的にはどんな図面を作るんですか?
伏図、軸組図、詳細図などね。また、設備設計や施工業者との調整もここで行うの。実施設計での決定事項が現場の施工に直結するから、とても重要な段階よ。
構造計算はどんなことをしますか?
構造計算では、建物にかかる荷重や地震力を基に安全性や耐震性を確認するの。成果物は「構造計算書」と「構造計算モデル」。
計算結果で設計が変わることもありますか?
あるわよ。必要に応じて設計内容を修正することも多いわね。この段階で部材の安全性や余裕を確定させるの。
成果物
・構造図→伏図・軸組図・詳細図・仕様書など
・構造計算書→一貫計算・二次部材の設計など
4. 確認申請
計算が終わったら、確認申請ですね。
そうね。ここでは、設計図面や計算書を提出して審査機関に確認してもらうわ。成果物は「最終設計図面」や「確認申請書類」。
審査機関から指摘があったらどうするんですか?
修正して再提出するの。そのため、スケジュールには余裕を持たせることが大事よ。
5. 施工監理
最後は施工監理ですね。
そうよ。施工が設計通りに進んでいるか確認し、現場の問題にも対応するの。成果物は「修正設計図」、そして「検査報告書」ね。
現場で変更が発生することもありますか?
もちろん。施工中に条件が変わることは珍しくないわ。その際には設計者として迅速に対応することが求められるの。
さいごに
これで全体の流れと成果物が整理できたかしら?
はい!企画設計から施工監理まで、それぞれの段階で何を作るべきか、何を決めるべきかがよくわかりました。
よかったわ。この流れを意識すれば、自分の役割も見えてくるはずよ。わからないことがあれば、いつでも聞いてね。
参考文献
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まとめ
構造設計は、企画設計 →基本設計 → 実施設計 → 確認申請 → 施工監理という流れで進行します。各段階ごとに成果物があり、それに基づいて設計を深めていくことが重要です。
- どの段階で何を作成するのか
- どんな決定事項があるのか
- スケジュール管理がどれほど重要か
を意識することで、仕事の理解が深まります。
構造設計はチームで進める仕事です。分からないことがあれば遠慮せずに先輩や上司に相談し、効率的に業務を進めていきましょう!