本記事では耐震診断の流れを紹介します。
近年、既存建物を増えてきているため、若手でも耐震診断を行うことが多くなるでしょう。
とっきつきにくい範囲になりますが、本記事を参考に業務を始めていただければ幸いです。
他の記事では、耐震診断が必要な理由などを紹介していますので、そちらも参考にしてください。
耐震診断の流れ
- 建物概要の整理
- 建物調査の概要・結果
- 耐震診断の方針・結果
1.建物概要の整理
建物概要の整理では、建設年代、図面(構造図)の有無、改修履歴などを行います。
構造図がない場合は、実測調査などにより構造図を作成する必要があります。
2.建物調査の概要・結果
建物調査の概要・結果では、最初に既存の図面と現状の建物の整合を確認します。
建物劣化、材料強度などを調査します。
RCの場合を下記に示します。
調査項目 | 内容 |
外観目視調査 | 構造耐力や耐久性に影響を及ぼすひび割れ等の劣化を目視で調査 |
図面照合調査 | 設計図と現状の構造部材を目視で照合 |
コンクリート 圧縮強度調査 | コンクリートコアを採取し圧縮試験を行う (直径10㎝を各階3本程度) |
コンクリート 中性化調査 | コンクリートコアの中性化深さを調査 |
鉄筋発錆調査 | 鉄筋を斫り出し発錆状況の調査 |
不動沈下調査 | 基礎の沈下状況の調査 |
・コンクリート強度の推定→①平均値‐1/2×標準偏差、②1.25×設計基準強度→①と②の最小値で決定
3.耐震診断の方針・結果
第1次診断法・第2次診断法・第3次診断法がありますが、本記事では第2次診断法について紹介します。
- 第1次診断法:柱や壁の断面積から終局強度を推定する簡便な診断法(1から3階建て程度の低層で行う)
- 第2次診断法:梁は壊れないものとして柱と壁の終局強度や粘りを鉄筋や鉄骨の効果を考慮して求める。層崩壊を防ぐことが目的。Ai分布は考慮しないため、上層では危険側の設計となるため高層の建物では使用不可の可能性がある。
- 第3次診断法:柱・壁・梁の終局強度や粘りを鉄筋や鉄骨の効果を考慮して求める。梁が壊れることが想定される建物で使用。また、高層の建物で使用。
耐震診断の流れ
- 経年指標Tの設定→現地調査結果より求める
- 形状指標SDの設定→偏心率・剛性率よりFe
- 部材終局度Quの算定
- 部材靭性指標Fの算定→変形性能Ds
- グルーピング計算
- 終局限界Fuの算定
- Is指標、Ctu・SD指標の決定
- 耐震性能の判定
第2種構造要素
水平力に対してはその部材の破壊は許容できるが、曽於部材が破壊した場合にそれまでに支持していた鉛直力をこれに代わって支持する部材がその周辺にない鉛直部材
第2次診断法
判定指標
Iso≧0.60、Ctu・SD≧0.28(SRC内部鉄骨:非充腹)
→現行基準と同程度の耐震性がある
それ以外の場合→耐震性に疑問がある
Iso=Es×Z×Rt×G×U
Es:耐震判定基本指標(Es=0.6・第2次診断を採用)
Z:地域指標
Rt:振動特性係数
G:地盤指標
U:用途指標
下階壁抜け柱の検討
上階に壁があり下階に壁がない柱を下階壁抜け柱といいます。
なお、直交壁が取り付く柱の場合は除きます。
軸力比制限値が0.5以下となることを確認します。(SRC内部鉄骨:非充腹)
軸力比制限値はRCの場合・SRCの場合などで異なるので詳細はこちらの基準書を参考ください。
既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説・既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説
まとめ
本記事では耐震診断の流れを紹介しました。
初めて耐震診断をする際は本記事を参考に初めてみてください。
そのほかの詳細な検討方法は他記事にて紹介したいと思います。